「東」から見直す幕末・明治維新(「幕末動乱・明治維新を問い直す座談会」改題)〜幕末東軍派連続企画最終回(総集編)〜
【レポ】
遅くなりましたが、去る5月24日に催しました『「東」から見直す幕末・明治維新』のご報告を申し上げます。この催しは昨年より全六回・半年間に渡って開催してきた「幕末東軍派連続企画」の総集編であり、各回で活躍した論客の皆様にお集まりいただきました。
まず開会にあたり、国旗に向かい国歌を斉唱いたしました。このことは単に国民儀礼を果たしただけでなく、催しの趣旨が反国家的なものではないことを明らかにし、皇室と日本を考える意識を高める上で意義深かったと思います。続いて主催責任者の僕の方から一言ご挨拶申し上げ、論客の皆様に自己紹介をしていただき、議事へと移りました。議事進行は、熊谷顕浩氏に担当していただきました。
最初の提起(①)は「水戸学における尊王攘夷」と題しまして、小生がお話しさせていただきました。内容としては、水戸藩は御三家の一つですから当然と言えば当然ですが、水戸学が「倒幕」或いは「王政復古」の思想ではないということを、天狗党の鎮派(穏健派)と激派(過激派)の双方の立場から論証しました。そして「水戸学における尊王攘夷」とは、東照宮の末裔である征夷大将軍を戴く幕府が、天下の諸侯に号令して実行するものであり、いはゆる「志士」のような人たちが好き勝手にやるものではないことを述べさせていただきました。
続いての議事ではまず、それならば何故、明治国家が水戸学に基づくものであるという考えがこれだけ一般に流布しているのか、それだけでは説明がつかないのではないか、錯誤はどこで生じたのか、との疑義がありました。それに対して、明治以降の国民教育における歴史観を含めた明治政府の自己宣伝の影響があるのではないか。水戸学に「倒幕」的な考えをもった人物が流入してきた事実から、正規の書物には表れていなくてもそのような議論はある程度はなされていた蓋然性が高いのではないか。水戸学が「国体」や「尊王攘夷」という言葉を用意し議論の場を提供したという情況を、水戸学が「明治維新」の思想的な母体であると短絡したのではないか。…などの議論がありました。
次の提起(②)は、「御公儀の海防と外交政策」と題して、立原慎太郎氏に話をしてもらいました。内容はまず、幕末に至るまでの御公儀(徳川幕府)の外交国防政策をまとめた上で、江川英龍のお台場建設や岩瀬忠震のハリスとの外交交渉を例証に、幕府には充分に外交担当能力が備わっていたことをご説明いただきました。また、長州藩の暴発である下関戦争などの事例から過激な攘夷がまったく不可能であったこと、「佐幕」は「尊王」と相対立するものではなく、むしろ「非義勅命ハ勅命ニ有ラス」と述べた大久保利通はじめとした薩長側こそが偽りの「尊王攘夷」であったこと、用心していた幕府の政策を薩長倒幕勢力がぐちゃぐちゃにしてしまったことが大東亜戦争における「大攘夷」の失敗にも繋がっていること、などのご指摘がありました。最後にまとめとして、御公儀が、どんな国家にとっても測り知れない価値を持つもの―平和、統一感、象徴に対する献身―を涵養してきたことをご紹介いただきました。
それを受けての議事ではまず、長州は、朝鮮と密貿易をやっていたという話があり、開国すれば儲かるということを分かっていたはずなのに、なぜ過激な攘夷という方向に行ったのかという疑義がありました。それに対して、こう思ったら動かねばならないという間違った陽明学精神の気風があったのではないか。長州は、尊王イデオロギーに乗っかって幕府を倒して自分たちの差配する政権を作りたかったわけで、それに一番都合がよかったのが「攘夷」だったのではないか。掛け声としての「攘夷」を唱えているうちに引っ込みがつかなくなったのではないか。長州をはじめとした維新の志士たちは日本国をどうしようという発想がなく、とりあえず政権奪取をしたかったのだろう。幕府が、それなりにしっかりとした政権運営を続けているにもかかわらず、「倒幕」という行動に出たのは、それこそ売国奴というべきではないか。…などの議論がありました。
さらに提起③「新選組の尽忠報国-それぞれの形」(松井不二夫氏)提起④「小栗忠順、後の世に遺すもの」(丸嶋輝氏)提起⑤「奥羽越列藩同盟の血脈」(大場一央氏)と非常に興味深い発表と討議がありました。以上、ご報告とさせていただきます。(文責:しか)
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【告知】
(※この告知文はhttp://8809.teacup.com/imperial/bbs/158より転載。該当掲示板のログは順次自動消去されるため参考資料としてここに保存す)
05/24【雑司が谷】 「東」から見直す幕末・明治維新 投稿者:お知らせ 投稿日:2009年 4月29日(水)14時08分28秒
幕末・明治維新は、高度に近代化されつつあった欧米列強に対応するために国家体制を再編成した、言うなれば現代日本にとっての神話時代です。しかしそこで語られる物語は、あまりにも「倒幕」という薩摩や長州を中心とした一党派の主義主張に拠りすぎているのではないでしょうか。勿論新選組の生き様や会津藩の悲劇がとりあげられる機会も多々ありますが、それは所詮は敗者であることを前提としたサブ・ストーリーとしてしか扱われていないように思われてなりません。
そこで今回私どもは、薩摩や長州ではなく、朝廷や新政府でもなく、「東」すなわち徳川幕府やその遺臣たち、あるいは水戸天狗党や新選組や奥羽越列藩同盟の立場から幕末・明治維新を見直すべく座談会を催すことにいたしました。各位の連座をお待ちしております。(主催責任者、石川太郎)
■催し:「東」から見直す幕末・明治維新
■日時:万延150年5月24日(日)午後1時半開場、午後2時開会
※途中入場・途中退席可
※午後8時頃閉会予定
■会場:雑司が谷地域文化創造館1階、第二・第三会議室
※http://www.toshima-mirai.jp/center/e_zousi/index.html
※東京都豊島区雑司が谷3-1-7 千登世橋教育文化センター内
※東京メトロ副都心線「雑司が谷駅」2番出口先
※JR山手線「目白駅」より徒歩十五分弱
■主な論客:熊谷顕浩、大場一央、松井不二夫、丸嶋輝、立原慎太郎ほか
※一般参加者の議論への飛び入りも歓迎いたします。
■参加料:なし
※ご協賛は有り難く頂戴いたします。
「皇室と日本を考える」
http://nhlar.blogspot.com/