2012/10/07

「何がフランス革命をもたらしたのか」(しか)

「何がフランス革命をもたらしたのか」

 「フランス革命」というと、どうしてもその華々しい歴史物語に目がいってしまいがちである。勿論そうした物語は、それはそれで大いに結構。ベルばら万歳!ああオスカルよ~ しかし今回は「何がフランス革命をもたらしたのか?」という視点から、この大革命に至る歴史を振り返るとともに、そこから我々にとって有益な何らかの教訓を引き出したいと思う。

 そもそも大革命以前のフランスの国体であった絶対王政は、ルイ14世「朕は国家なり」ルイ15世「至上権が存するのは、朕一個人のなかだけである」ルイ16世「私がそれを欲するから、それは合法だ」という言葉に表わされているように、ある意味では「王がすべて」という体制であった。しかし国王は、ランス大聖堂での聖別式で王国基本法(歴史的に形成された慣習的原則)の尊重を誓約することに表れているように、「絶対」ではあるが「専制君主」ではない。また当時の(それぞれの管轄区の)最高法廷である高等法院は、王令の登録権(=登録拒否権)と王への建白権を保持しており(王令は高等法院に登録されることで初めて効力を有する)、政治システム上も王権は一定の制約下にあった(ただし王が高等法院に臨席し、「親臨法廷」を開催することで強制登録が可能だった)。
 では、この絶対王政がどのようにして倒壊に追い込まれたのかを見てゆこう。18世紀後半には、オーストリア継承戦争・七年戦争・アメリカ独立戦争といった度重なる戦争により、財政は慢性的な危機状態にあった。これを打開するため、王政は繰り返し改革を試みることになる。ルイ15世の最末期に、高等法院の権限を大幅に制限しようとしたモプー。ルイ16世の治世の初めに経済自由化政策を推し進めたテュルゴ。アメリカ独立戦争の戦費を借金で賄いながら、地方政治改革を試み、また財政報告書の公開に踏み切ったネッケル。それまでの諸改革をふまえ、身分の区別なく負担する土地税の導入・穀物取引の自由化・国内関税の撤廃・州議会の設置など包括的な改革案を提案したカロンヌ。新税の導入を実現しようと高等法院と対決したブリエンヌ。総じて言えば、王権側は、司法改革により自らに権力を集中させ、特権身分への課税(平等な税負担)と経済自由化を実現することで財政危機を打開し、また地方議会を設置することで国民合意の政治を形成することを意図していたと言える。しかしこれらの諸改革は、特権身分の強硬な反対ばかりでなく、「モラルエコノミー」を求める民衆の経済自由化政策への反対や、王権内部での派閥争いもあり、ことごとく失敗に終わった。
 このように「決められない政治」または「決めたことをやり通せない政治」が続く中で、事実上の財政破綻に直面したことから、1788年に翌年の全国三部会開催が決定された。王権側としては、あえて全国三部会の開催に打って出てることで、懸案の諸改革を一気に成立させたいと考えたのであろう。しかし全国三部会の代議士の人数や選出方式や、議事・採決などの運営方式をめぐって、特権貴族 VS ブルジョワ層(+少数の自由主義貴族)の対立が急激に高まり、88年の秋には、王権の思惑を超えた「政治の季節」へと突入することになる。このことは後にジロンド派の領袖として活躍するブリソの、88年末における次のような言葉に表れている。「私がフランスを発ったときからまだ六ヶ月しか経っていないのに、帰国してみると、もはや私の同胞たちは見分けがつかないほどに変わっていた。彼らは大きな溝の向こう側に行ってしまったのだ」。こうしてパトリオット(愛国派)と名乗るフランス革命の変革主体(その第一世代)が形成され、彼らが全国三部会の第三身分代表として89年6月にフランス革命の狼煙をあげることになった。

 ここで「何がフランス革命をもたらしたのか?」という問いに立ち返ると、決定的な第一要因としては、体制の統合力(ヘゲモニー)の崩壊にあったと言わねばならない。勿論これ以外にも、サロン・アカデミー・フリーメーソン・文芸サークルなどを母体とする新しい社会関係の発展や、ルソー・ヴォルテール・モンテスキューに代表される啓蒙思想の隆盛、公共意見(opinion publique=世論/公論)の誕生なども、大革命のための必要な要件であったろう。しかし決定的な第一要因とは言い得ない。もしルイ16世が偉大な国王であったなら、王権主導の諸改革が断行され、革命には至らなかったかもしれないのである。
 このフランス革命に至る歴史から何らかの一般的教訓を引き出すとすると、革命家が革命を作り出すのではなく、革命的状況(革命を必要とする状況)が革命と革命家を作り出すと言うことができる。私個人は、戦後レジームからの決定的転換という意味での「日本革命」を待望する者であるが、革命を待望する諸個人にできることは、革命への運動ではなく、まずはその思想的基盤を形成すること、親しい人間関係を大切にすること、既成秩序の混乱を支持すること、または革命を信仰することのみであろう。
(文責:しか)

主な参考文献
◎柴田三千雄『フランス革命はなぜおこったか』(山川出版社、2012刊)
○柴田三千雄『フランス革命』(岩波セミナーブックス、1989刊)
○柴田三千雄ほか『世界歴史大系・フランス史2』(山川出版社、1996刊)

※上記の内容は、H24年10月7日に開催された月例会における発表「フランス革命前史についての検討」の一部分を加筆修正したもあのである。